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「…という訳なのよ」
「なんと」
事の顛末を説明すると、岸田は食事をする手を止めて興味深そうに聞き入った。こじゃれた定食屋というのは、品の良い木の作りの小さな和食屋で、日菜子は魚定食を、岸田は丼ものを頼んだ。
「金額がね、大きいでしょ。何に使ったのかなって」
「うーん。隆先輩は、浮気するような感じじゃないとぼくは思ってたんですけど…」
「どうなんだろう。もう何を信じていいか分からないの」
ふう、とため息をつく。思ったよりも色気のある声が出て、自分でも驚いた。岸田は黙って何か考えている風だったけれど、やがて言った。
「あの、もしかしたら僕、隆先輩のこともよく知ってるし、お力になれるかもしれません。もし良ければ、戦略練るために今度ゆっくり飲みに行きませんか?」
「あら」
日菜子は目を瞠った。男性からのお誘いなんて、何年ぶりだろう。
「もちろん。ええと、来週の金曜日なら隆も飲みに行くって言ってたから、大丈夫だと思う」
岸田が嬉しそうに笑った。
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