ふつうの裏側

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 ごめんごめん、と隆は目の前で手を合わせた。芝居がかったその仕草に、怒りよりも呆れが先に立った。隆の分まで、わたしがしっかりしなくちゃ、とその時の日菜子は決心したのだった。  でもそれからも、隆の浪費癖は治ることはなく、そのことで二人はことある毎に衝突してきた。日菜子だって働いているから、忙しい仕事の合間にストレス発散したくなる気持ちは良く分かる。けれど、将来のことを考えたら今のうちに少しでも貯金しなくては、とも思っていた。そんな日菜子を、隆は「心配性だなあ」と鼻で嗤った。そして、隆が日菜子を鼻で嗤うのはお金の話に限ったことではなかった。  自分が隆に見下されているという自覚はあった。一人じゃ何もできない女だと思われていることも。  勤めているのも、中小企業のアシスタントと言えば聞こえはいいが、ビジネスの根幹にかかわるような業務は何もしていない。それでも、給料は隆より少し良くて、それがまた隆をイライラさせていることも分かっていた。隆は、給料の差を打ち消そうとでもするように日菜子を貶める発言をすることがしばしばだった。
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