ふつうの裏側

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🏠  例えば、エアコンが壊れた時。  夏のさなかのとんでもなく暑い日で、窓から見える外の世界には、強烈な日差しが降り注いでいた。ふらりと散歩に出ていった隆がそろそろ帰ってくるだろうと、日菜子は台所で素麺を茹でていた。その時、リビングの方がやけにムッとすることに気付いたのだ。なんだろう、と見てみると、エアコンが止まっている。リモコンをいじったわけでもないのになぜ?と日菜子は首を傾げた。ちゃぶ台からリモコンを取り上げて、操作する。電源はつくものの、冷たい風が出てくる気配がない。  仕方なく、スマホで「エアコン 故障 原因」と調べてみると、室外機のフィルターや基板が原因のこともあるようだった。「エアコン 修理」で検索すると、業者に頼めば少なくとも2、3万円はかかるらしい。  日菜子は一通り検索結果に目を通した後、一旦ベランダに出てみた。普段触ることのない室外機のフィルターは埃でかなり汚れていて、日菜子は雑巾を使って丁寧に埃や汚れを取り除いていった。フィルターを掃除することで改善されるケースもある、と書いてあったからだ。真夏の暑い日にベランダで汗だくになって働く日菜子を見て、帰宅した隆は鼻で嗤った。 「プロの業者を呼べよ」 「え、だって結構お金かかるって言うから、まずは自分でできる事が無いかなって」 「かーっ、そういうとこがほんとドンくさいんだよな。無駄無駄、プロに頼むのが一番早くて確実なんだから」  今思い出しても、腹が立つ。
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