17人が本棚に入れています
本棚に追加
🏠
「なんで、こんなことになってるんだっけ?」
通帳を目の前に広げて、出来るだけ、落ち着いた声を出そうと努力する。感情的になったら負けだ。今回は、10年前のようになあなあでは済まさない。そう決意して、日菜子は隆と向き合った。
「お金が必要なんだったら、相談してくれればよかったのに、なんでこっそり通帳を持ち出したの?」
目の前の隆は不貞腐れたような表情で、テーブルに載せた自分の手を見つめている。叱られている子供じゃあるまいし、と日菜子は苦々しく思う。
「黙ってちゃ、分からないよ」
ね?と隆の顔を覗き込む。
「あのさ、俺も色々あるんだよ、付き合いとか。大体、俺くらいの歳で、小遣いこんなに少なくてやってる奴、他に居ないよね。俺らさ、共働きじゃん。あまりけちけちすんの、いやなんだけど」
「だからって。55万円だよ?それがどんなに大金か、分かってる?」
最初のコメントを投稿しよう!