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返済
うまくいった。ここまでミハルの気持ちを掴んでいたとは、我ながら感心する。
始めは、お金のことでミハルには心配かけたくないと伝え、でもそうすると会えなくなると言う。そうすればあのミハルは自分からお金を出してくるだろう。俺に会いたいという気持ちが強ければ、そのために俺に金を渡してくるはずだ。思った通りだった。一回成功すればあとは簡単なことだ。
“愛してる”
“会いたい”
“ミハルだけだよ”
俺だけのATMの暗証番号のようなものだ。そんなに大した額ではなかったが、ミハルは
出してくれた。いろんな口実をつけ、何回か振り込んでもらった。少しずつでも回数を重ねて総額が100万を超えた頃、だんだんと出し惜しみをするようになってきた気がする。
___家庭があるから、そんなに自由になる金はないのだろう
それくらいの想像はつく。でも、俺に出してくれるお金が俺に対する気持ちのような気がして、その金額以上にうれしかった。
ミハルが出してくれたお金は、ほとんどそのままとってある。いつか、この窮屈な暮らしから抜け出すための資金にしようと思う。もちろんそんなこと、ミハルには言わないが。
そろそろミハルが出せるお金も限界かなと思う頃、スマホ代の請求だからと二万をお願いしてみる。わざわざ持ってきてくれるらしいから、会って感謝を込めて抱くことにした。
…が、なんとなくミハルの気持ちがここにない気がする。
「あの、この前も言ったけど。お金は返してもらえるんだよね?私もそんなにないから」
___そういうことか、それならば…
ここらで安全策を講じておくことにする。
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