ミハルの友達

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ミハルの友達

昨日のことですっかり俺を信用した様子のミハル。お金はもう引き出せないだろうが、せめてこの存在だけは手放したくないと思う。 ___どうして? おそらく、俺のことを一人の男として認識してくれているからだろう。 ミハルが言う“好きです”も“愛してる”も、それが本心かどうかなんて確かめることはできない。たとえ本心だとわかったところで、家庭を捨てて俺のところに来ることはない。 ___だったら、つなぎ止める必要もない けれど。 今となっては、ミハルの存在がないと自分というものを保てない。目には見えない呪縛のようなものに包まれた今の暮らしでは、ふとした瞬間に自分を見失ってしまいそうだ。 仕事の合間に、たわいもない話題でLINEを続ける。面倒だと思っていたミハルとのやり取りが、今は沈みそうな心を軽くしてくれる。 ___せめてこのまま、つながっていてほしい 《今日はこれから、大事な友達と会ってきます。もしかしたら翔馬さんのことを話してしまうかも?》 〈それはノロケてくれるってこと?〉 《そう!こんなにイケメンと愛し合ってますよ、みたいな》 〈そんなこと打ち明けちゃうと、友達に引かれて軽蔑されるかもしれないよ。話さない方がいいんじゃない?〉 友達とやらに俺とのことを止められたら、ミハルとの関係が終わってしまいそうだ。 《そんなこと言う人じゃないよ。その人も男友達がいるって言ってたから、気が合うと思う。じゃ、また帰ったらLINEするね》 〈わかった。気をつけてね〉 男友達とは、不倫相手のことなんだろうか?ミハルは俺とのことを話すのだろうか? まさか、金を貸したことまでは話さないだろう。女は見栄っ張りな生き物だから、自分の男が金のないヤツだとは言わないだろう。 ♪♪♪♪♪ 会長からの着信だった。 「はい」 『明日からお前がもてなしをするのは、この人だ。決して失礼のないように』 すぐに写真が送られてきた。たまにテレビでも見かける俺よりも一回りは上の女だ。女としての性別ではあるだろうが、その見た目と印象では俺には自信がなかった。 ___これで最上級のもてなしをしろだと? どんなに強力なドリンクも効果がないような気がした。
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