すべては親のために

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 ヒット曲を多く出し、知名度も高い。スタッフを十数人もつれて歩くくらいには影響力もある。恵とは、なにかと共演する機会が多かった。 「おう、純。久しぶり~! 」  ドラム担当の派手シャツ男が、声をかける。 「お久しぶりです、角田(かくた)さん。うわっ」  純の肩を、フランクに抱いてきた。 「元気してたか~? このあと父ちゃんとなんかすんの?」 「ご飯行く約束してて」 「お、いいな~。いいもん食って大きくなれよ~? ってっもうなってるか!」  ギター担当の湯島(ゆしま)が、続けざまに話しかけた。 「純、このあいだの恵さんとのコラボ、見てくれた?」 「歌謡祭のやつですか? 見ました~。歌も演奏もかっこよかったです」  純はキツネ目を細める。ぽややんとした柔らかい雰囲気が、全身からただよいはじめた。 「ネットでも話題になってましたよ。番組が公式で出した動画も、再生数すごいですし」  プラネットと純は、和気あいあいと話し込む。恵が腕を組みながら不満げに口をはさんだ。 「おまえら、俺より純と仲良くしやがって」 「いやあ、純くんめっちゃいい子っすからね~」  ひげを生やしたボーカルの和久(かずひさ)が、冗談交じりに返す。 「恵さんと違って全然怖くないですし、ムチャぶりすることもないですから」 「おまえら今度共演したとき覚えとけよ」  父親と後輩たちの会話は、まだ続いている。その間、純は気配を消し、プラネットのメンバーをそれぞれ見つめていた。とあるメンバーに視線を向けたとき、鼻に手を当てる。 「それにしても、ずいぶん成長したな、純は」
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