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すべては親のために
父は大物タレント。母は大物女優。星乃純を説明するには、これだけで十分だった。
「おはようございます、恵さん」
「おはよ~」
颯爽と歩く星乃恵に、社員やスタッフ、後輩が頭を下げている。
モデルができるほどの身長の高さに、華のある整った顔。大きい息子がいるとは思えないほどに若々しく、輝かしいオーラを放っていた。
「星乃さん、先日はお世話になりました」
「はいはい、また今度」
ここは大手芸能事務所、フローリアミュージックプロダクション。創業以来、アイドル、歌手、タレント、俳優、モデルといった数々のスターを世に送り出している。
事務所に百五十名以上が在籍する中、星乃恵の影響力は群を抜いていた。
曲を出せば必ずヒットし、バラエティに出れば必ず数字が取れる。テレビとラジオを合わせれば、レギュラー、準レギュラー、冠番組の数はまさにトップレベルだ。
そんな恵の後ろをついていく、ブレザー姿の中学生が純だった。父親の絶大なオーラに隠れて目立たない。
純はそれで構わなかった。あいさつを返す父親の背中を見つめ、穏やかな笑みを浮かべる。
「あ、星乃さん、すみません」
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