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「それでは、最後にお嬢様から全使用人に対してお話があるとの事。皆、心して聞くように。」 朝礼を仕切っていた執事のライネルがそう告げて、私の方を見る。 彼には今日この場で話をさせて欲しいと昨夜のうちに頼んではいたけど、内容までは伝えてない。 ついでに、今朝起きられなかった私をわざわざ起こしにも来て貰って本当に申し訳ない……。 「みんな、おはよう。」 「おはようございます!お嬢様!」 前に進み出て挨拶をする私に、一斉に答えてくれる使用人達。 そんな彼らの顔を見つつ、1つ息を吐いてゆっくりと話し始める。 「今日はみんなに話したい事があって時間をもらいました。 朝の忙しい時にありがとうね。」 その一言だけで使用人がざわつく。 このくらいで……とは思うけど、まぁ今までの態度考えたら仕方ない。 「まずは、みんなに謝らせてください。 これまで、私は本当に酷い主でした。 たくさん苦労をかけたし、恨みに思う事もあったでしょう。 本当にごめんなさい。」 そう言って頭を下げる。 「お嬢様!?」 「そんな、やめてください!」 「頭を上げてください!」 驚いた使用人達が口々に告げる。 でも、彼らは私の謝罪を受け取ってそう言ってくれている訳ではない。 これを元にまた何かされるのではないか。そう思って止めようとしているだけなのはわかってる。 「急にこんな事を言って驚かせてるのはわかってるし、信じて貰えるとも思ってないわ。」 今は信じて貰えなくても構わない。むしろ、それが当然だと思う。それでも。 「これからの私の行動を見て、今日の言葉が真実かどうか確かめて欲しい。 貴方たちへの感謝を、きちんと行動で示してみせるから。」 驚き戸惑う使用人達一人一人の顔を見ながらそう告げる。 実際には私が彼らに出来る事なんてほとんどないのはわかってる。 それでも、日々の小さな感謝でもいい。そう言うことからきちんと伝えていきたい。 そう思う。
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