雨音のあしあと。ひかりに、ふれる。そして、はじまる恋

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「あらあらびしょ濡れじゃないの。咲良ちゃん、ちょっとだけ腰を屈んでくれる?手が届かないのよ。今の若い人はみんな背が高くてスタイルが良くて羨ましいわ。おばちゃん横に大きくなるだけで、身長は小さくなる一方よ」 乙葉さんが笑いながらタオルで髪を拭いてくれた。明るい笑い声に自然と笑みが溢れる。乙葉さんの何気ない優しさが涙が出るくらい嬉しかった。 「あ、あの、聞いてほしい話しがあるんです」 乙葉さんやよしずみさんなら話せるような気がした。よしずみさんとはさっき会ったばかりなのになんでだろう。自分でも不思議だった。 「立ち話もアレだ。改札口の隣にあるコーヒーショップに入ろう。電車は大雨のため運転見合わせだ。話しているうち再開するだろう」 乙葉さんとよしずみさんと一緒にコーヒーショップに向かった。 「やはり混んでいるな。カウンター席しか空いてないみたいだ」 「咲良ちゃん段差があるから気を付けて。床が濡れているからゆっくりでいいわよ」 乙葉さんの的確なアドバイスのお陰で躓くことなく転ぶことなくなんとか丸い形の椅子に座ることが出来た。
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