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それが僕とゆのくんの出会いだった。
ゆのくんと出会ってから分かったこと。それはゆのくんがまだ高校生で、僕よりも四歳も年下ということ。人当たりがよく、いつもにこにこと笑っていて明るい性格だということ。引っ込み思案で人見知りの僕とは正反対だ。
駅前のロータリーで市内循環バスに乗車するといつもよりかなり混雑していた。
「咲良さん」
ゆのくんの声だ。
キョロキョロとあたりを見渡していると、
「ここに座って」
ぽかぽかと温かいゆのくんの手が肩に触れてきて。促されるまま座席に腰を下ろした。
「ゆのくんは?」
「咲良さんが座れればそれでいい。この前みたく揉みくちゃにされないように、俺が咲良さんを守るから。安心して座ってていいよ」
大学附属病院のバス停から歩いて十分。週末はおばさんが営むスナックの手伝いをしているとゆのくんが話してくれた。
「春乃さん。おばさんの名前ね。咲良さんを今度店に連れてきてってすごく騒いでいるんだ。咲良さん人見知りだし、無理にとは言わないけど……」
「僕なんかと会って大丈夫?」
「うん。だって母さんの妹だもの。そう簡単には動じないよ」
ゆのくんがくすりと笑った。
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