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「今日も点字ブロックの上に自転車がずらりと停められている。点字ブロックは視覚障がい者の命綱です。なんでここに自転車を停めてはいけないか注意書きの看板がちゃんと立っているのに。スマホばっか見て、誰も見ようともしない。割れた瓶やゴミもあちこちに捨てられているし。躓いて転んだりしたら危ないのに。みんながみんな目が見える人ばかりじゃないんだよ。咲良さんちょっと待ってて」
ゆのくんがポケットからゴミ袋を取り出すと、誰に頼まれた訳でもないのにゴミや割れた瓶を拾いはじめた。
自分のことは後回し。
まわりの人や、僕のことをいつも考えてくれる。ゆのくんは優しい。だからこそこんなにも心が強く惹かれるんだと思う。
「これで良しと。咲良さん行こう」
ゆのくんと一緒に病院に行くと、
「柚木咲良さんですよね?」
男の人に声を掛けられた。
「どちら様ですか?」
ゆのくん、もしかして怒ってる?
声色がいつもと違うのは気のせいかな?
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