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「どんだけ飛ばしてきたんだよ」
ゆのくんが驚くのも無理がない。電話を切ってから十分も経過していないうちに、乙葉さんが駆け付けてくれた。
「妹のところにたまたま用があったのよ。あとは母さんに任せてバイトに行ってらっしゃい。かなり混んでいて、てんてこ舞いになっていたわよ」
「ヤベ。すっかり忘れていた。母さん、咲良さんのこと、頼むよ。ちゃんと送り届けてよ」
ゆのくんが慌てて駆け出した。でもすぐに戻ってきて、
「あんまり飛ばさないでよ。安全運転で頼むよ」
「分かってるわよ」
乙葉さんが呆れたように笑っていた。
「陽向の心配症は誰に似たのかしらね?って私しかいないか。もぅ、やぁ~~ね。変なところばかり似ないで欲しいのに」
「追い払ったぞ」
初めて聞く、違う男の人の声が聞こえてきた。
「もしかして、ゆのくんのお父さんですか?」
「ごめんなさいね。私の弟なのよ。公務員をしているの。主人は借りている畑で店で使う野菜を収穫しているわ」
「そうなんですね」
「恥ずかしがり屋でね、咲良さんに会うのが恥ずかしいみたいなのよ。そのうち紹介するわね」
乙葉さんが洗濯する服を袋に入れるのを手伝ってくれて、よしずみと名乗った男性がそれを持ってくれた。
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