3. 恋しき英雄

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 ある日、祐子が休み時間に私の教室まで来て声をかけてきた。  「ねえ、明菜。翔くんと別れてから新しい彼氏ができたんだって?」  「え?」  破局のことは翔ルートで知れ渡っているだろうが、ヒデオのことは誰にも言っていないはずなので、急に祐子に訊かれてびっくりした。  「いやいや、明菜のデート現場を目撃したって子が結構いるのよ」  水族館、遊園地……思い返せば私が選んだデートスポットは定番の場所ばかりで、他の同級生カップルに遭遇しないはずもない。  「あのさ、今まで言ってなかったけど、私にもついに彼氏ができたんだ。今度の日曜日、ダブルデートしない?」  私は彼女の告白に驚いた。男子とは殆ど会話しないし、私と遊ぶ時と部活で絵を描く時を除けば勉強ばかりしているイメージだったからだ。  「いいよ。場所と時間はどうする? こっちはたぶん何時でもいいけど」  ヒデオは今まで、必ず指定した時間に来てくれた。仕事だから当然かもしれないが、今までよく他の予定とバッティングせずにこれまで駆けつけてくれたものだ。  他に客はいないのだろうか? 私が独占してしまっているのだろうか? とにかく、こっちはどうとでもなるから祐子の都合に合わせることにした。  「それじゃあ、午前11時にカフェ花園で」  「いいね、祐子。そこって超流行りのオシャレ喫茶じゃん」  ダブルデートの日程はこうしてすぐに決まった。  放課後、私は校舎外の階段で彼の店に電話をした。日曜日の午前11時は他の予約も入っていなくて、大丈夫とのこと。  それから木、金、土と時間はあっという間に過ぎ、約束の日がやってきた。
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