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「お待たせ、明菜ちゃん」
私が一人カフェで10分早く待っていると、間もなくして彼も店へとやってきた。
祐子たちが来ないうちに500円を払うため、彼にも早めに来てもらったのだ。
支払いを終えて何事もなかったように予約してあった席に先に座ると、祐子のいつになく明るい声が聞こえてきた。
「お待たせ! 明菜……って、え?」
店の入り口でこちらを見た瞬間固まってしまった祐子。何を驚いているのだろうと思ったのも束の間、彼女の後ろから彼氏が姿を現し、私のほうまで固まってしまった。
「うそ……」
祐子の彼氏もまた、ヒデオだったのだ。
もしかすると、双子? そう思った矢先、どこにでもいそうな平均顔の店員が声をかけてきて、私は絶望のどん底に突き落とされた。
「いらっしゃいませ、ご予約の4名さまお揃いでしょうか?」
よく見ると、声も顔も全く同じ。髪型や服装のバリエーションで気づかなかっただけで、私のヒデオと祐子のヒデオだけじゃなく、世の中がヒデオで溢れていたのだということにその時やっと気がついた。
店主が言った通り、レンタル人材はヒデオのみだったのだ。
「お客様、お客様っ!」
私はショックのあまり頭が真っ白になり、意識が遠のいていった。
それから何年かが過ぎ、長い治療の末退院した私は祐子と一緒に山奥の農村で暮らすことにした。
ヒデオ恐怖症になった私たちは、人口が少ない田舎ならきっとヒデオもいないだろうと踏んだのだ。
幸い農家は後継者難の人手不足で、意欲さえあれば働き口には困らないだろうし……
「あれ? なんか妙に若い男性が多くない?」
先に気付いた祐子が気を失って隣でパタリと倒れる音がした。
〆
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