再会

　窓の外に広がる黄色い世界がすべてを飲み込むかのように視界を遮っていた。さっきまで見えていた杉林は微かに陰影でそこに存在するのがわかる程度で，黄色い花粉がすべてを飲み込み，渦を巻くように辺り一面を覆い尽くしていた。

「なんだよ……これ……杉花粉がこんなに舞うって見たことも聞いたこともないぞ……」

　黄色い世界の下のほうで何かが動いているのが視界に入った。人影のような何かがゆっくりと建物に近づいて，正面玄関のほうへと進み，部屋の窓からは見えない死角へと姿を消していった。

「誰……？　誰か来る……？」

　武志が慌てて隣の嘉晃の部屋に行くと，嘉晃も緊張した面持ちで窓の外を見ながらスマホで外の様子を撮影していた。

「嘉晃！　外から誰か来たの見たか？」

　スマホの画面を見ながら軽く武志の言葉に頷くと，視線は画面に向けたままゆっくりと顔を武志に向けた。

「女だ……女が真っ黄色な花粉の中から現れた……顔は見えなかったけど，女だった……」

「女……？」

「ああ……背の高い女だ……」

　嘉晃の口調から，それが櫻子を想像させるのは意図的だと感じたが武志は何も言わずに黙ったまま窓の外に視線を向けた。

「なんで……なんで，あいつが今頃になって現れるんだよ……自殺したんじゃないのかよ……」

　スマホの画面には黄色い花粉が舞っている様子が映し出されていたが，嘉晃の手が激しく震えていた。