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窓の外では風に舞う花粉が空に模様をつくり,時折り吹き付ける突風が窓を激しく叩きガラスが割れるんじゃないかと不安になった。
「嘉晃,俺,桃香と華を見てくる!」
そう言って部屋を飛び出すように出て行くと,廊下を走り抜け,階段を駆けあがった。武志が廊下を走るのを追いかけるように窓の外の花粉が横に吹き付け,大きな波をうった。
桃香の部屋の前につくと激しくドアをノックし,すぐ隣の華の部屋のドアも殴るようにノックした。
「桃香! 大丈夫か!? 外がすごいことになってるんだけど,大丈夫か!?」
二人とも反応がなく,何度かノックを繰り返してから桃香の部屋のドアノブを回した。ドアは簡単に開いたが,部屋に入ろうとした瞬間,目の前が真っ黄色になり,部屋の中が花粉で埋め尽くされているかのように天井から壁も床も黄色く染められていた。
「うわっ……なんだ,これ……。桃香! いるのか!?」
慌てて隣の華の部屋に行ったが,桃香の部屋と同じ状況ですべてが黄色く埋め尽くされていた。
「どうなってんだよ!? 華! 華はいるのか!? 大丈夫か!?」
どっちの部屋からも二人の気配はなく,黄色い花粉で埋め尽くされた部屋はどこか幻想的でもあった。
「なんなんだよ……これ……二人とも,どこに行ったんだよ……」
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