卒業ー私たちの場合ー

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 ひらひら舞い落ちる桜が、綺麗な春だった。  中学一年生、初めて知り合う者同士が、あふれる教室。  あちらこちらで交流をはじめたクラスメイトたちをよそめに、人見知り人間がすることといえば、ノートの隅にパラパラ漫画を描いて休み時間を潰すくらいだ。  はみ出た余分な線を消しゴムでゴシゴシと削ぎ落していたら、机の上に置いていたシャーペンに肘がぶつかる。  お気に入りの新しく買った水色のシャーペンは、コロコロと床に転げ落ちてしまう。  斜め前に落ちたそれは、私が手を伸ばすよりも先に、前の席の子が拾い上げてくれた。 「見て? 私も同じの持ってる~!」  振り返った彼女は、初対面とは思えないほど人懐こい笑顔を覗かせて。  ホラと自分の筆箱から取り出して見せてくれたのは、私のとは色違いのピンク色のシャーペンだった。 「これ、キラキラしてめっちゃ可愛いよね」  可愛い?  彼女は言うなり、窓の方に二本のシャーペンを掲げて陽に透かす。  中がクリアなそれは、サンキャッチャーのように陽を集め、キラキラと虹色の光を壁や天井に乱反射させている。 「ね、可愛くない?」 「あ、うん。そうだね」  可愛いというかキレイだなって思ったことは言わずに、私も笑って同意した。  それが後にクラスで一番仲良くなった千尋(ちひろ)との出会いだった。  
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