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不思議な感じだった。
いつも、いつだって、私と千尋の趣味は被ってしまう。
持ち物やイイなって思う男の子まで。
「桜井くんって、可愛いよね」
「え? かっこよくない?」
「もしかして、朱音ちゃんも?」
「もしかして、またなの?」
互いの顔を見て噴き出した。
もう彼女のいる人だし、ミーハーにキャッキャと騒いでいるだけで失恋には程遠いからこそ、笑えるだけではなく。
好みの男子まで似てしまう自分たちの気の合うことに、またかと笑い転げるのだ。
まるで双子みたいだね。
周りの子達は私たちのことを、そんな風に言う。
一つにまとめたポニーテール、身長や体型、肌の色、後ろから見たらどっちがどっちかわからないよね、と笑われる。
示し合わせたわけでもないのに、妙に似ている持ち物たち。
ただそんな中でも好みはあって、暖色好きな千尋と寒色ばかり選ぶ私。
「こっちの方が可愛くない?」
小首を傾げてカバンについたオレンジ色のクマのキーホルダーを見せる千尋。
「いや、どう見てもパープルクマのがクールでかっこいいでしょ」
「かっこいいって、朱音ちゃんの感覚っていつも不思議よね? クマちゃんは可愛いものだと思うけど」
わけがわからないと困ったような笑いを浮かべた千尋に対して、初めて心の奥に生まれた灰色めいた感情をなんと呼ぶのだろうか。
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