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そうして訪れた【森乃や】
わたしの隣で深々と頭を下げた祥さんは、父と母に改めてあの日のことを謝罪し、それからわたしたちの入籍を報告した。
電話口ではあんなことを言っていた母だけど、実際に顔を見たら怒られるに違いない。そう覚悟していたのに、父も母も渋い顔はしたもののわたしたちを責めることもなく、『森乃やのことは心配するな』と言う。
わたしは心底驚いた。
それならいったいわたしは何のために、日本に―――【森乃や】に帰って来たのだろう。
荒尾と結婚しなければ森乃やが潰れてしまうと言われて、どれだけわたしが悩んだか。断腸の思いで【ミシェルハーブ農園】を辞めて、ロンドンを後にしてきたのに―――。
腹の底でふつふつと憤りが湧きあがってくるのを、わたしはグッとこらえた。婚礼の直前に逃げ出した手前、そんなことを怒れる立場ではない。
荒尾と結婚せずに済んだことを良しとしなければならないのだと、自分を必死に宥めた。
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