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祥さんは横抱きにしていたわたしをリビングのソファーに横たえると、キッチンから水を持って戻ってきた。
「香港での仕事が予定よりかなり早く進んで、あとは現地の担当者に任せて俺は引き上げたんだ」
「そうだったんですね……あ、ありがとうございます」
差し出されたグラスを受け取ってお礼を言う。
さっそく飲もうとグラスに口をつけたとき、聞こえてきた言葉に盛大に狼狽えた。
「まあ、今週は特に忙しかったからな……花嫁をほったらかしにしすぎて愛想を尽かされたら困ると言ったら、秘書が都合をつけてくれたようだ」
「あいそっ…れは優秀な秘書さんでっ…!」
『愛想を尽かしたりしません!』と言いかけたけれど、寸でのところで踏みとどまった。なんだか負けのような気がしたのだ。
わざとらしいほど急ハンドルを切ったわたしに、祥さんは「くくっ」と笑いを噛み殺すと、「本当にその通りだな」と言いながらわたしの頭を撫でた。
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