戸惑いの蜜月

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祥さんは立ったまま腰をかがめ、覆いかぶさるようにしてわたしにくちづける。 突然のことに驚いたわたしは、大きく目を見開いて固まったまま。 すると彼は、二三度わたしの唇を啄んだあと、かすかに唇が触れる距離で囁いた。 「目を閉じて、寿々那」 それはまるで魔法の呪文のよう。 言われるがまままぶたを降ろすと、「いい子だ」と囁かれた。 しっとりとしたバリトンボイスに鼓膜を震わされ、まるで波紋が広がるように、そこから体全体に甘い疼きが広がっていく。 心臓がドクンと波打って、目を閉じていても顔が赤くなっているのが分かった。 彼の舌がわたしの上下唇を割り、咥内に入って来た。 歯列をなぞり口蓋を撫でられ、舌を絡め吸われる。 彼の舌がわたしの咥内で蠢くたび、混ざり合った唾液が水音を立て、口の端から垂れるそれすらも、音を立てて啜られた。 まるで会えなかった時間を埋めるように、彼はわたしの咥内を自分のものでいっぱいにしていった。
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