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 壱月(いつき)柚月(ゆずき)。  二卵性の双子として同じ日に生まれた彼らは、いつも視界の中にお互いがいた。  二つ並んだベビーベッド、互いを見ながらよちよち歩き、仲良く通った保育園に小学校、そして中学と時を経て、それぞれの進路として選んだ高校でもそれは変わらない。  兄妹という理由からか、二年生になっても同じクラスにはなれなかったが、昼休みに会えるから寂しくはない。やはり互いの手がとどく距離にいると安心する。いままでもこれからも、それは変わらないだろう。 「やっぱり双子だけあって、ホント仲良いよね」  憩いの時間である昼休み。中学時代からの友人で、柚月の親友ともいえる山代(やましろ)雪菜(ゆきな)がそういうと、双子の片割れが吐息をついた。 「俺としては、いい加減に柚のお守りから解放されたいんだけど」 「なにそれ。いっちゃん、ひどいっ」  頬杖をついてコーヒーパックのストローをくわえている壱月の隣でお弁当を食べていた柚月は頬をふくらませた。 「本当のことだろ。いわれたくないなら人参を食え」  じろりと壱月に睨まれ、柚月はううと顎を引く。壱月は顔が整っている。世間一般でいうイケメンだ。そしてイケメンの睨みは5割増しが相場である。毎日見ている顔であるが、きつく睨まれれば柚月とてそれなりに怖い。  柚月はお弁当箱を見下ろした。そこには花の形に切られた人参が二個。料理教室を開いている母親が作るお弁当は、いつも凝っていてとても美味しい。だがしかし。 「だって人参、嫌い……」 「甘く味付けされてる。おふくろが柚のために、わざわざ手をかけてんだから食え」 「わかってるけど無理。甘くても無理。これだけは無理なの。ねえ、いっちゃん〜」 「今日は食ってやらない」 「ええ〜そんなあ」  大の人参嫌いの柚月のために、母親は日々工夫を凝らしてくる。その気持ちは嬉しいし感謝もしている。もちろん残したりしたくない。けど無理なものは無理なのだ。 「いっちゃん、お願い。人参とトンボだけは無理なの知ってるでしょ?この二人だけは無理なの知ってるくせに〜」  涙目ですがると、雪菜の隣でパンを食べていた男が吹き出した。 「ははっ。トンボってなにそれ。柚月ちゃん、トンボも無理なの?つーか二人って、人参もトンボも人間じゃないし。ウケる」  くくくと笑うのは添田(そえだ)光輝(こうき)。光輝は高校からの友人であるが、壱月と同じクラスで部活も一緒。そして雪菜と付き合っている。その流れで、昼休みは大抵この四人で過ごしているかとが多い。
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