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最強たる所以
農村の、畑仕事を営む若夫婦の間に、次男として生まれた小神野 美千年改め、ユラシア・アナガデロは、生まれながらにして前世の記憶を持ち、知性を保ったまま生をうけた。
(ここが異世界。アニメとかでみたような感じだ。現代より100年か200年ぐらい前をイメージするといいんだろうか)
ユラシアは、何をすればいいか、ゲユイナルに植えられた本能で察知した。ステータスの確認だ。
(すべてのステータスがカスだな。それもそうか、赤ん坊なんだからな)
ステータスをそのまま見ていると、今度はスキルのところに移った。何かあるようだ。
(#殺人鬼__キラー__#スキルか......どれどれ)
殺 ・・・あらゆるものの生命活動を瞬時に停止させることができる。
隠密・・・対象は完全に無となり、他者からの干渉を遮断することができる。
加速・・・自分の動きを何倍にも速くすることができる。
万能・・・触れたものを理解し、瞬時に使いこなすことができる。
創造・・・あらゆるものを作ることができる。
破壊・・・視界に入っているものを任意で破壊することができる。
無敵・・・あらゆる疫病を弾き、傷を負わない。そして、自身が望まない限り、死は訪れない。
(なんだこのチートじみたスキルの羅列は......)
例えるならば、『どんな能力でも手に入るとしたらどんな能力がいい? 』と聞かれた小学生の回答をすべて詰め込んだようなスキル。攻略に行き詰まるからと、仕方なく使ったチートコマンドを止められなくなり、ふと気づいたときにはもう最強になっていた、という感じだろう。
(いくらなんでもやりすぎだこれは)
赤子用のベッドの上でそう思ったユラシア。ステータスの画面を閉じ、周囲を見ようとした。首もすわっていないので、不用意に動かせない。辺りを見回すには目を動かすしかないのだ。
観察していると、とても美しい女性が歩み寄ってきた。おそらく母親だろう。母親はユラシアを抱き抱え、困ったような表情をしていた。
「いつになっても泣かないわね。産まれたときも、今までも泣かなかった」
ユラシアは忘れていた。赤子は泣くものなのだ。母親を心配させないようにと、ユラシアはすぐに泣き出した。納得のゆく演技だったと思う。
「はっ! 泣いたわ! でもいきなり......多分お腹が空いたのかしら」
スキルによって死なない体となっているので、食べる必要はない。しかし、味は感じるようなので、久しぶりの飯を堪能させていただこう。
と思っていたが、何かおかしい。そう、ユラシアはまた忘れていた。赤子が口にするものといったらズバリ。
「よいしょと......はい、おっぱいよ」
(ぬおおおおおやめろぉおおお!! 俺は女性経験ゼロだ! ましてや出産直後の膨らんだ生の乳なんて、そんな破廉恥な!! )
「あら? 嫌がってる。ご飯じゃないのかしら? 」
ユラシアは必死に抵抗した末、疲れ果てて寝てしまった。体の構造だけは赤子なのだ。
「うーん、まあいいわね。寝かせておけばなんとかなるわ」
アホな母親だ。これでよく長男を育てることができ
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