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初めての都会
ペールを殺してから、ユラシアは随分と人間らしくなった。
体を鍛え始め、母親から世界のことを学んだ。普通は生活していくにつれて、学力は上がっていくものなのだが、ユラシアはそれを積極的に学んだ。元の世界での経験も相まって、ユラシアは異例のスピードで成長した。
十年ほどたった頃ユラシアは、一流の冒険者顔負けの体力と頭脳をもった。望めば騎士団の団長になれるほどだ。しかし、ユラシアにはもっと別の目的があった。
冒険者になり、女神のいう通り人を助ける。それがユラシアの心を刺激し、ここまで立派な大人に育てて見せたのだ。
-ユラシア17歳-
「もう......行くのか」
両親は泣いている。それもそうだ。育ちがいい息子が都会に旅立ってしまうのだから。
「ああ、ここまで育ててくれてありがとう。いつか必ず帰ってきて、たくさんのお土産をもって帰る」
「都会に出ても元気でね」
両親の顔は昔より心なしか更けて見えたが、それを感じさせない整った顔立ちだった。その二人の子供というのだから、ユラシアもかなりの美男子だった。
「母さんも......元気で」
「......うん」
行ってらっしゃいと、両親は快くユラシアを見送った。見えなくなるまでずっと。もっとも、涙で視界がぼやけて、最初から見えていなかった可能性も否定できない。
-都 カルーデ-
「ここが、都......」
農村と比べて、かなり栄えている。あちこちに店があり、賑わいも段違いだ。
「まず探すべきなのは、酒場か? 」
事前に調べてあったのだ。酒場には、ギルドのための設備が整っているのだ。冒険者が集まる場所でもある。
「おにーさん。何かお探し? 」
ユラシアに声をかけたのは、胸元が開いた服を着た女性だった。幼い顔をしており、かなり若いことがうかがえる。
「さ、酒場を探しているんだ。どこかにギルドと一体型の酒場がないか? 」
「ああ! 冒険者の方ですね? その酒場なら私が働いているところですよ! 案内します。ついてきてください! 」
そう言うとその女性は、人混みへと消えていった。
ユラシアはそれを必死に追いかけた。
-酒場 オズニーニャ-
「これがその酒場か......」
その建物は、酒場というにはかなり大きかった。ギルドが大半を占めているのだろう。
ドアを開けて入ると、屈強な男たち、手練れそうな魔法使いが沢山いた。
「おにーさん、さっきぶりですね」
室内の構造などを見ていると、気づかぬ内に、さっき話しかけてきた女性が前に立っていた。
「新米冒険者の方は、あちらで手続きをしてもらいます。その後ギルドマスターにその資料を提出、合格をもらって、EからSSSまでのランクをもらえば、晴れてギルドの一員です! それじゃあ、頑張ってくださいね? 」
ユラシアはカウンターへ行き、そこの受付娘に話した。
「新米冒険者だ。ギルドに入りたい」
「かしこまりました。それでは、個人情報の諸々をこちらの資料に書き込んでください」
差し出された紙には、名前、年齢、出身地、スキルの欄があった。
「スキルを書くのか......」
「はい。できればですが」
「できれば? 」
「スキルを知られたくない人って多いんですよ。味方にも手の内を明かしたくないって」
ユラシアは安心した。キラースキルを知られては、目立ってしまうことこの上ない。なんとかしてスキルを誤魔化す作戦を考える必要はなくなった。
資料を書き終えると、さっきの女性が後ろに立っていた。
「書き終えましたね? それではギルドマスターのところへ案内します。ついてきてください」
女性は階段をトテトテと登り、真ん中の部屋に入っていった。ユラシアも続いてその部屋に入った。
「マスターッ! 新米冒険者さんですッ! 」
「ああ、ありがとう」
その部屋の奥の椅子には、貫禄のある老人が座っていた。小柄ではあるが、周囲に漏れ出るオーラがただ者ではなかった。
「あんたがマスターか。この資料を」
机からメガネを出してかけたマスターは、眉間にシワを寄せながらユラシアの資料に目を通した。そして疑問な部分を質問した。
「分かっているよ。さてさて......スキルを書いていないんだね」
「あ、ああ。スキルを知られるのは嫌いなんだ」
ほう、とマスターはメガネをかけ直した。そして、何か魔法を使ったような仕草をすると、目を見開いた。
「......合格だ。君は合格」
何か様子が変だったが、その気持ちは女性の声でかき消された。
「おめでとうございまーす! 見事合格ですッ!! それでマスター、ランクは? 」
「うむ。では、ユラシア・アナガデロ。君をSSSランク冒険者に任命する! 」
女性は唖然としていた。もちろんユラシアもだ。そしてそれを盗聴していたギルドの魔法使いたちも全員。
「「えええええええええええええええええええ!!!!!!!!」
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