ずっと

3/4
前へ
/237ページ
次へ
「だから…」 「だから?」 「時間をかけるしか無いのかなって」 さっき棚に戻したワインを買い物かごに戻した彼は、私の次の言葉を待った。そんなに慌てなくてもワインを選ぶ時間ぐらいあるのに。悠さんだって悠さんなりに悩んでいたし、この話題は落ち着かないのだろう。 「時間、か…」 「私達、結婚するんでしょ?」 「ああ。勿論」 「じゃあ時間は何十年もあるじゃない。10年でも20年でも、自然に和佳子お母様が納得…というよりも諦めに近いと思うけど。分かってもらえるのを私は待とうと思う。多分、私達が何か言えば言うほど、意地になっちゃうだろうし、私達だってしんどいもの」 「そう、だな…確かに、言えば言うほど、だもんな、あの人…」 レジのある建物に歩みを進める彼に寄り添って歩く。その手に持つ買い物かごはいつの間にか2つになっていた。さっきまでかごは1つだったのに。いつの間に増やしたのだろうか? 他の買い物客は紙袋にワインを入れて貰っていたけど、悠さんはワインの量が多いので段ボールに詰められていた。重さで段ボールの底が抜けないように、店員さんがかなり頑丈に段ボールの底を補強してくれているのが、妙に可笑しかった。 「なあ、美咲」 帰り道、高速道路のサービスエリアの駐車場でご当地サイダーを飲んでいた。目だけで返事をすると、彼は言葉を続けた。 「入籍日、決めないか?」 「ごほっ…!ごほごほっ!」 「大丈夫か?」 「へ…変なとこ入った…」 背中をさすって貰い、何とか呼吸を整える。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加