辞令

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職員室の自席に戻る。 呉林先生から校務分掌の一覧を受け取り、職員会の資料に目を通す。 自分が欲しい情報を頭に叩き込む。といっても、全ての情報を完全に記憶出来るわけではない。情報漏洩的に問題の無い『年間行事計画』、略して『年計』と何時間目が何時何分から始まるのかを示す『日課』さえスマホのカメラに納めれば、後は何とかなる。 「ちょっと荷物を、取ってきます」 隣席の鈴木先生に念の為伝える。伝えなくても良いのかもしれないけど。何も言わずに出て行くと帰ると思われてしまう。 先生グッズの入った組み立て式の買い物カゴを車の後部座席に置いていた。取り出して職員室にまた戻る。 運動場を見渡すと、桜の木の下で小学生がレジャーシートを敷いて何かを食べている。お花見をしているのだろう。 学校の敷地内でお花見って。聞いたことないぞ? アリなのね?オッケーなのね?許されちゃうのね? 平和というか、長閑(のどか)というか。私の味わってきた世知辛い世の中というものは幻だったのだろうか…?
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