卒業ボタン

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卒業ボタン

 卒業式がやっと終わり、生徒たちが下校していく。そんな下駄箱の前で男女の二人が向かい合っていた。 「あ、あのぉ……」  その子は頬を赤らめ俯いていたが、意を決した表情で勢い良く顔を上げた。 「せ、先輩! 卒業おめでとうございます! ずっと先輩のことが好きでした。先輩の第二ボタンを私にください!」 「わりぃ、もう無いんだ。ついさっき欲しいって言われて、あげちゃった」 「じ、じゃあ、この際第一でも構いません!」 「ごめん、第一も二番目にきた子にあげちゃったんだ。君と同じこと言ってたな、『この際』って」 「えー、それじゃあ第三で我慢します」 「ごめん、第三も第四も第五も、来た順にもう全部あげちゃったんだ。ちなみに袖のボタンも残ってないよ」  良く見ると先輩の学ランは、黒一色となっていた。流石モテ男である。  その女子生徒は華奢な肩を震わせ、今にも泣き出しそうだ。そんな彼女をみかねた先輩の次の言葉で、彼女の曇り顔に笑顔の光が差し込んだ。 「君は、二年三組の桜木(こころ)ちゃんだよね。ボタンは無いけど、俺で良かったら貰ってくれるかな?」 「へ?」 「君のことが、好きなんだ──」         卒業ボタン         🌸おしまい🌸
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