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大学を卒業した。
研究室の教授は自分勝手で放ったらかし、文句だけは一丁前に言ってくるゴミクズみたいなやつだったが、もしかしたら人間ってそういうものなのかもしれない。
兎に角、最悪の生活から解放された。
卒論発表の帰り道、何味のアイスを買ったんだっけ。
約4年間、オープニングスタッフとして働いてきたカフェのアルバイトを卒業を機に辞めた。
実家よりも居心地の良い空間で、時なんて過ぎなければいいのにと何度も思った。
店長や特段仲の良かった方々にプレゼントを貰った。嬉しかったが、嬉しいですとは素直に言えなかった。言ったら何かボロが出そうで怖かったのかもしれない。
家への帰り道、車の中で何味のアイスを食べたんだっけ。
大学の友人と飲みに行った。
会うのは今日で最後だから、思う存分羽目を外したかったが、お酒は飲めないし運転係でもあったから理性だけは保たなければならなかった。
楽しい時間はあっという間で、正直何を話したかなんて覚えていない。それでも、また遊びに来てとか行くとか、そういうことを言っていたことだけは夢に出てきそうだなと思った。
朝方、家に帰ってから眠気覚ましに、何味のアイスを舐めたんだっけ。
家族と、この家と会うのは来年になるかもしれない。
僕が行く場所は随分と遠い。気軽に行き来出来ない場所だ。
それでいいと思ったし、今も思っている。はずだ。
しかし、いざこうして振り返ってみると20年以上生きた場所から離れるというのは寂しい。本当に行くべきなのか。でも引越しの準備も設備も就職先の待遇も、全部が整ってしまった。
「ここまでしたんだからもう行くしかない」
ずっと、親にもそう言った。親もそうだと言った。
本当はなんて言って欲しかったのだろうか。
アイスクリームでいいから、何か。
僕はアイスクリームを随分と溶かしてしまった。
僕も流れるように社会に溶けるのだろう。
そして次第に死にたくなる。
誰もいない、僕だけの空間で死んでいく。
アイスクリームは、きっとバニラ味だ。
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