危険な誘い

1/4
前へ
/161ページ
次へ

危険な誘い

そんな秋も終わりに近いある日、アーロンに背の高い目つきの鋭い男が近寄ってきた。彼はアーロンにニッコリと笑いかけ声をかけた。 「君、家はないのか?」 アーロンは不信感も露に、その男を睨みつけた。 「何だよ。文句でもあるのか。」 男は可笑しげに笑い彼に手を差し伸べた。 「いいや。文句なんてないさ。君、私のところに来ないか?私のところに来れば、毎日美味しい物を食べさせてあげよう。暖かいベッドも準備するよ。」 食べもの?ベッド? 普通ならこんな危ない話に乗ることなどないのだろうが・・・ これから来る季節の事を思うと辛くなる。 苦労せずに食べものが手に入るのなら、何があってもどうって事無い。嫌ならまた逃げればいい。 アーロンは、心でニヤリと笑った。 そうだよ。頂くもん頂いて、トンズラすればいいんだ。 アーロンは男の手を握った。男に手を引かれ立ち上がる。 「さあ、向うに車を待たせている。おいで。」 男はそう言って、スタスタと歩いて行った。アーロンは黙って男の後を追った。 男が歩いて行った先には、かなり高級な車が停まっていて、黒いサングラスをかけた男が扉を開けて待っていた。 車に乗せられ暫く走る。 周りの景色は、次第に賑やかな繁華街へと変わっていった。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加