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危険な誘い
そんな秋も終わりに近いある日、アーロンに背の高い目つきの鋭い男が近寄ってきた。彼はアーロンにニッコリと笑いかけ声をかけた。
「君、家はないのか?」
アーロンは不信感も露に、その男を睨みつけた。
「何だよ。文句でもあるのか。」
男は可笑しげに笑い彼に手を差し伸べた。
「いいや。文句なんてないさ。君、私のところに来ないか?私のところに来れば、毎日美味しい物を食べさせてあげよう。暖かいベッドも準備するよ。」
食べもの?ベッド?
普通ならこんな危ない話に乗ることなどないのだろうが・・・
これから来る季節の事を思うと辛くなる。
苦労せずに食べものが手に入るのなら、何があってもどうって事無い。嫌ならまた逃げればいい。
アーロンは、心でニヤリと笑った。
そうだよ。頂くもん頂いて、トンズラすればいいんだ。
アーロンは男の手を握った。男に手を引かれ立ち上がる。
「さあ、向うに車を待たせている。おいで。」
男はそう言って、スタスタと歩いて行った。アーロンは黙って男の後を追った。
男が歩いて行った先には、かなり高級な車が停まっていて、黒いサングラスをかけた男が扉を開けて待っていた。
車に乗せられ暫く走る。
周りの景色は、次第に賑やかな繁華街へと変わっていった。
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