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車が停まった。
そこは大きなバーの前だった。
車を降りた男の後について中に入る。
バーはまだ明るい時間ということもあり、それ程客が入っているようにはなかった。
男はアーロンを従え奥に入って行った。何枚もある扉を開け奥に進む。そうして、少し狭い階段をあがった。
2階には幾つもの部屋がある長い廊下が続いていた。男はその1つにアーロンを連れて入った。扉を閉めアーロンに向く。
「さあ、此処が今日から君の部屋だ。此処にある物は、なんだって使っていいからね。」
そう言って、奥のほうを指差した。
「あそこにトイレとシャワー室がある。さあ、シャワーを浴びてきたまえ。その格好ではベッドにも入れない。」
男は優しげな瞳で、アーロンを見つめた。
「あんた、何でこんな事をするんだ?」
アーロンが不審げに見つめる。男は笑って答えた。
「私は身寄りのない子どもたちを見ると、どうにもほっておけない性分でね。此処には君が居たいだけいていいから。君は何という名前なんだ?」
「アーロン・ヒル。」
アーロンが小さく呟いたのを聞き、男は其処にあった机の抽斗から、1枚の紙を取り出した。
「綴りはどう書くのかな?ここに書いてみてくれたまえ。」
アーロンは男が取り出した紙を見た。それにはなにやら、びっしりと文字が書かれていて・・・難しい言葉の羅列に頭が痛くなる。
「これ、何?」
「ああこれか?なんだろうね。ここにあった紙なんだが。どうってことない紙だろう。さ、私に綴を教えてくれるかな?」
アーロンはチェと舌打ちをして、紙に自分の名前を書いた。男は彼からその紙を受け取り、ジッと見つめた。
「アーロンか。いい名前だ。」
優しい笑顔で顔を上げる。
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