一話

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一話

「最悪。ホントに不老不死になっちゃったなぁ」  女性は血が垂れ落ちてくる頭を押さえて赤く染まる床で座り込む。床には出血した原因のガラス瓶が砕けて散らばっていた。  リビングの窓から温かな日が差し込む。そんな光景を嫌な空間に顔を歪めながら、ぼんやりと見つめていた。 「逃げた。あーもう痛みも傷の治りも変わらないのにホントもう、いや」  ―――不老不死の薬が完成して世界は混沌としたものになった。死ぬようなこと、死にたくなるような事を受けても死ぬことは出来なくなった。病気には普通になる。本来なら死ぬようなことでも死なない。苦しみ続ける。  女性はため息を吐いた。 「……掃除しよう」  ゆっくりとした動作で立ち上がってキッチンの方へと向かう。ぽたり、ぽたりと床を赤い粒で汚す。女性は垂れ落ちる液体を見て、衣服に手を掛けて脱ぎ捨てる。ひたりと衣服は血を吸って赤く染まる。 「化物ね。ま、私のものだけじゃないけれど……」  さぁこれからの人生をどう生きようか?  
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