5月〈2〉あたらしいともだち・2

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「え……なんですかこれ? なんで、動くの?」  思わず、自分の手のひらを見つめる。もしかして、()()()? 「ああ、ここにソーラーパネルがついててね。光を当てると動くんだよ。かわいいねえ」 「びっくりした……」  先生が、ゆらゆらと首を振るネコを愛しそうに見つめつつ、土台を指差して教えてくれた。確かに電卓についているような、小さなパネルが埋まっている。  俺はてっきり、また自分が無意識のうちに何かをしでかしたのかと思った。世の中の不思議なことは、何もかもが魔術で引き起こされるとは限らないようだ。  ネコのマスコットを自分の机の上に置いた先生が、時計の方を見ている。俺もつられるようにそっちを見た。ああ、もうこんな時間か。そう思った時、グルグルと腹の虫が鳴く音。 「お腹がすいたなと思ったら、そろそろ夕飯の時間だ。食堂に行こうか。今日のメニューは何だろうねえ」  先生は机の上のものを綺麗にまとめ直し、さっさと玄関の方へ向かってしまった。 「あ、待ってください」  後を追おうとすると、机上のスマホがポコンポコンと音を立てる。また何か友達からメッセージが届いたようだ。返事は後にするが、確認するだけしておこう。 『そーだ、たまき、彼女できたか?』 『女子ばっかの学校にいるんだから、楽勝だろ〜?』  ……はあ、またそのことか。まったく、人の苦労も知らず、飽きもせずに何回も何回も。()()()悩みが尽きない最近は、この文句を見ると、何もかもがめんどくさくなってしまう。今日も、自動的に深いため息が出てくる。  ちなみにこの友達は、高校に入学して早々に……というやつだ。俺とは違い、昔からヤツは何をさせても要領がいい。予想はしていたが、そういうことに対してもうまく立ち回れたようだ。このあとはどんな返事をしたところで、長い長いのろけ話に突入するのがお約束である。さて、今日はいったい何を聞かされるのだろうか。  そして、通知音がもう一回。今度は何だよとスマホを睨む。図ったかのようなタイミングで、他の友達からも追撃が来たようだ。
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