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「お、緑丘。今日も早いな。」
先生だった。
「緑丘、また隠れてもYouTube見てただろ」
気づかれてた!?
つーっと冷や汗が頬を伝う。鏡が無いと分からないけど、きっと青い顔をしているだろう。
この高校は、放課後や緊急時のみスマホを使ってもいい事になっている。だから、私のやっていた事はルール違反だ。次にくるセリフはきっと・・・。
「あのな、緑丘。他の生徒はみんな我慢してるんだぞ。」
やっぱり。どこの先生も言うことは同じ。「みんな」「あの人」エトセトラ。規律を乱さず穏便に。揉め事はできるだけ避けたい。少なくともこの人達は、そう考えているだろう。辞めてしまえばいいのに。
もっと生徒のことを考えられる人。例えば、後輩の事を第1に考えてくれていた先輩のような先生がいたらいいのに。(いるけどネ←作者の心の声)
「しかもそれ、『ピーススタート』ってやつだろ。娘が見てるからわかるんだけど、あんまり好きじゃないな。あれだろ?前に、ふ・・・」
「うるさい!!!!!!!」
先生の肩がはねる。普段から大人しい私が叫ぶなんて、思いもしなかったのだろう。
「別にいいじゃん?好きでも。先生の好みなんて知らないし!前に問題があっても!今いいからいいじゃん!私の好きに文句つけないで!」
必死になってしまい、肩で息をする。もう話さないで。
そんな願いも虚しく、先生は冷静だった。
「・・・先生は、別に好きでいてもいいと思う。ただな、緑丘。緑丘は成績があれだろ?動画を見るじかんを、勉強の時間に回して欲しいんだ。」
ヘッドフォンが欲しい。ノイズカット付きの。
「先生はな、緑丘の為に言っているんだ。わかる・・・」
「・・・もう黙ってよ。」
ノイズに被せるように言う。聞こえないように、入らないように。
「為を思ってるなら黙ってて!そんなお節介なんていらない!」
カバンを机の横からひったくり、先生の横をすり抜けて廊下にでる。そのまま校門を出て走る。走る。走る。
1度だけ、後ろを振り返った。先生は追ってこない。こんな田舎で教員数も少ないから、1人減ったら大変 なことになるからだらろう。
大きな木の影に座り込む。こんなに大 きな木があるのも、田舎故かな。
その時、ピースタの『WWW』という曲のサビが、スマホから流れてきた。
※次回4月23日公開予定
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