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「えっ、いや、まぁそうだけどさ」
「和磨がそんな感じだと……俺まで、、緊張しちゃうじゃん」
「な、何で、尚翔が緊張すんの……?」
逸らした目を戻した瞬間、目の前に彼の綺麗な輪郭が見えたと思ったら突然……僕を抱きしめた。
ぎゅーっと次第に力が入りすっぽりと彼に包まれた僕は何が起きたかわからず呆然と立つだけが精一杯だった。
「嘘じゃないよ。ここ触って。分かる?心臓がドクドク言ってる」
僕の腕をゆっくり掴むと胸にそっとあてて、ドクドクと早く打つ鼓動を僕に感じさせた。
上半身裸の彼の肌に頬をピタッとくっ付けて伝わるとても温かくて優しい肌の感触。
「……うん、ホントだ」
「昨日言った事……冗談じゃないから」
「ん?」
「和磨を、、好きって言った事」
その言葉を聞いて僕も彼の背中に左腕を回して抱きしめ返した。やっと彼と心が通じ会えて同じ想いになれた。瞳がじんわり濡れてくる感覚を何とか抑えながら沈黙の中、意を結した。
「……僕も、、ずっと……尚翔の事」
「失礼致します!」
トントンとノックの音と同時に聞こえた元気な声。ついさっきこの部屋まで案内を案内してくれた仲居だ。
「あっ!!はい!どうぞ!」
焦った僕らはお互いの身体を離して距離を保つ。彼は後ろを向いていそいそと浴衣を羽織り隣の部屋行った。
「すいません。先程、お食事の件をお聞きするのを忘れていまして。いつ頃お持ちいたしましょうか?」
「あーえっと、、これから温泉入るのでその後にお願いします」
「かしこまりました。失礼しました」
それだけ言うとまたすぐ去って言った。測ったようなタイミングの悪さ。
言いかけた告白……彼は聞こえてたかな?
帯も締めて着替えて終わった彼が出てきた。
撮影の衣装にはなかなかない浴衣姿。安定の格好良さと少し官能的な容姿に見惚れてしまった。
「……和磨?着替えないの?そんなじっと見られたら恥ずかしいんだけど」
「いやすごく似合ってるよ!」
「ふふっ。なんかその言葉、撮影中よく言ってくれてたよね」
「……そう?なんか口癖みたいになってるのかな?だけどホントに似合ってるから!」
「ありがと。じゃ早く温泉入ろっ」
「うわ!露天風呂広い!」
「うん凄いね。ちょうど人も少ないタイミングでよかった」
広い露天風呂にはパラパラと数人いるだけ。開放感ある大自然を感じながら、熱いお湯だと一目で分かるくらいモヤモヤした湯気が立っている。
遠くまできた甲斐を感じながら、少し乳白色がかったお湯に身体を沈めた。
「あ〜!!気持ちいい!」
「ホント!生き返る〜〜!」
喉の底から声を漏らした二人は肩まで浸かった身体の疲れを全てお湯の中に出し切った。
「でもさ今日……来てくれて本当嬉しかった」
「えっ、、?」
「和磨が来なかったらきっと今頃A'zoneと契約してたかもな〜」
「あっ!もしかして台本って、、わざと?」
「さぁ〜どうでしょう〜?」
含み笑いをしながら意地悪そうに言う彼。
「あー!絶対そうじゃん?」
「でもさ、それがあったから今こうして遠い温泉地で一緒に湯船つかれてるわけだよ、ねっ!」
「んーまぁそっか」
何だかうまく言い包められたけど彼が契約に躊躇していたのは意外な事実だった。契約を僕に止めて欲しかった……?
それからたわいもない話をしながら身体も心も解放し、この仕事を始めたキッカケや先輩の愚痴を話して変なあだ名をつけて盛り上がっていた。
気付けば時間も経ち周りには誰もいない、僕ら二人だけ貸し切り状態になっていた。
「ん?和磨大丈夫?顔赤いけど?」
「あっ……ちょっとのぼせたかも、、ボーっとする」
いつもシャワーで簡単に済ますだけのお風呂。慣れない長時間の湯船のせいかすこし身体が熱くなりすぎて少しフラフラしてきた。
「あっ、上がってそこで少し涼んだら?」
「うん、、そうする」
ザバっと湯船から立ち上がると足が思い通りに真っ直ぐ進まない。ふらついて横の岩に手をつくと彼も立ち上がり僕の身体を支えた。
「あっ、危なっ!、、ちょっと気をつけて」
振り向くと彼の心配そうな顔と僕の熱った赤い顔が見合った。鼻と鼻がくっ付く距離で互いを見合っている。
「……尚翔、、」
「ん?」
「僕……もう我慢しなくていい?」
「えっ?大丈夫?そんなに身体熱くなっ、、んッ……っ!」
僕は彼の唇にキスをした。びっくりした彼の唇が離れるを手で抑える。少し開いた口に舌を入れると彼も身を委ね受け入れた。
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