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手を引かれ床にドサッと押し倒されて畳の上に転がった。上から見下ろす彼の綺麗な顔が天井の電気と重なる。
「あっ、、待って、、」
帯をスルスルっと軽やかに外していく彼。肌けた上半身を首筋から下を手を滑らしながら触れていく彼。その手つきだけで感じてしまう。
「浴衣って脱がしやすくていいね」
「そんなッ……あっ、ん……ン」
「のぼせたから、そんなに感度がいいの?それとも元々?」
「……いいから、、はやく」
彼は突起を口に含んで舐め始めた。撮影の時とは違い強くて激しくない。反応を伺いながら時折目線を顔の方に向けて緩く舐める。
慣れてない僕に配慮しているのだろうか。
だけど彼が僕の身体に……と考えれば考える程に自身のソレは反応していく。体の右手が下着に手をかけて下にずらした。
「和磨、ねぇ男に舐められた事は?」
「……そっ、そんなのない…ッん」
「じゃ俺が初めて?よかった」
そう言ってソレを口に含んで動き始める彼。言うまでもない舌使いに気持ちよくなって、腰が自然に動く。彼の頭に手を添えて抑えきれない声を隣や廊下に聞こえないように最小限にするのに精一杯だ。
「和磨……気持ち、いい?」
「……うッ、しゃべらないッ…、で」
顔を歪ませてしばらく耐えていると途中で動きがピタッと止まる。肩で息をしながら彼を見ると舌をペロッと犬のよう出しながら顔を近づけてくる。
「ねぇ俺のも触って、、」
「えっ……うん」
すでに硬くなった彼のそれを下着に手を入れて触れると敏感に反応し息を漏らして感じている。
それが嬉しくて手の速度を早めると彼の表情も余裕がなくなっていく。
「あっ……いいッ、、」
ソレをピクピク反応させながら演技ではない声を漏らす。すると突然彼の指がお尻の割れ目に当てられ隙間に入ってきた。思わずビクンッと反応した僕の顔を見てキスをするとゆっくり指を入れていく。
「……っん、、ちょっ待っ、」
鈍い痛みを感じて彼の手を掴んだ。
AV業界で働きながら情けないが女性との経験も片手で数えるほどなのに初めて好きになった男との行為を目の前に不安にならないわけがない。
「……どうしたの」
「大丈夫かな、、俺こんなのシたことないし」
そう言って弱気な僕の顔をじっと見つめて優しい笑顔でおでことおでこを合わせた彼。
「和磨…… 大丈夫だから、俺に預けて」
彼が吐息混じりに耳元でそう言った。不安で強張っていた顔も緩んで頷くと指を挿れて解すようにゆっくり動かしていく。
「んっ……!あぁ、っ……」
知らない感覚が体を襲って彼の背中に片方の手で爪を立てると彼の背中にも汗がじんわり滲んでいるのが分かる。徐々に慣れてきたのか痛みも消え快感に似た何か全身をめぐる。
でも何か物足りない感覚に彼の顔を見た。
「……尚翔、もっと……シたい」
汗まみれで歪ませた顔して懇願する僕の顔はきっと酷いものだろう。彼にはどう見えていたか理性を失いかけた僕に考える余裕なんてなかった。
「和磨やらしい、、いい?じゃ挿れるね」
彼の大きなソレが指に代わって入ってくる。指の感覚とは全然違う熱さと圧迫感に唇を噛み締めた。痛みなのか快感なのかわからないがとにかく彼と繋がれると言う事実だけで満たされた。
「大丈夫?……痛くない?」
「ううん、大丈夫だからそのまま続けて」
腰を動かして奥へと入っていく。母親に甘える子どものように彼にぎゅっとしがみついた。少しずつ動きを早めて更に奥へと強く突き上げられ恥ずかしいくらいに声を上げた。
「あっ…、あっ……!ふぅっ、くぅ……」
「和磨。いい声出てきたね……んっ」
彼もまた完全に脱ぎ切れてない浴衣を揺らしながら僕の上で息を吐いている。下から見上げる彼の顔は少し幼く見えた。Naoとしてのセックスは何度も見てきたのにカメラ越しでは知り得なかった顔をする彼に愛おしさが増す。
「あっ、いまっ……締め付けがすごい」
「尚翔が、っ可愛いから……はッあん!」
「ちょっ……何そッれ、、」
お互いのソレがそろそろ限界を迎えようとして深くキスをしてラストスパートをかける。心も身体も彼でいっぱいになってどうにかなりそうだ。
「あっあっ…ん、、イキそう。いい?」
「僕……ッも一緒にイきたい」
両指を絡ませてどこから来るのかわからないこの全身が震えるような感覚がじわじわ迫ってくる。耐え切れなくてつい声が出てしまった。
「尚翔!……好きっ、、」
「俺もっ!」
それと同時に二人は果てた。フワッと覆いかぶさった彼の身体の重さを感じてまた幸福感に包まれながら呼吸を整える。僕の胸に顔を置いた彼の乱れた髪をやんわりと直す。お互いの汗がベタベタと肌と肌が糊でくっついているようだ。
「あっヤバい。浴衣、汗でぐっしょり濡れてる!……もう一着あるかな?」
彼の腰回りに溜まった浴衣に触れてそう言った僕に声を出して笑う彼。
「ちょっと何がおかしいんだよ」
「また出たADの癖。衣装を気にする下っ端ADの岩咲くん!」
「あっ……」
「岩咲くん。このままシャワー行って次のシーンの準備した方がよろしいでしょうか?」
「もう!ふざけるなよー」
「ウソウソ。朝までこのまま離れたくない。ずっとこうしてたい」
僕の上でそう言った彼の頭を撫でた。彼と繋がれて彼じゃなきゃダメだと改めて思い知らされた。
それでも時間は刻一刻と過ぎていくもの。
彼の髪からフワッとあのオイルの香りがした気がした。東京に戻ったら現実に戻る、いつもの生活に戻る。
「和磨……?いま何考えてる?」
「んー、内緒」
「何で?教えてよ」
「じゃ、教えてあげよっか。……背中痛いからそろそろ布団敷かない?」
「もう!ムードも何もないじゃん」
彼と抱き合って一つの布団で眠った。
今まで一番近く彼の寝息を聴きながら朝から来るのを拒んだ。幸せをくれたあの香りのタイムリミットはもうあとわずかだ。
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