【Case03】玲生×小早川

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 「カウンセラーに、、ですか?」  翌日朝から女性の上司に呼ばれた僕は完全に死んだ顔で指定された別室のドアを叩いたが言われた言葉は意外だった。  「そう、赤平くんが良ければ営業じゃなくカウンセラーはどうかなって。面接の時にそっち希望って聞いたけど」  「、、はいそうです」  「まだ気持ちが変わってなければどうかな?ちょうど岡崎くんが退職でする事になってね、ちょうど席が空くから彼の会員さんを引き継いでやってみない?」  カウンセラーとは、いわゆる仲人役。会員の希望に合う相手を探し両者の希望が合えばお見合いの場を設け同席する。  正直言ってここは首の皮一枚つながったと喜ぶべきだろう。周りと競って成績比較される日常から脱出できるのだから。  ただ知らない誰かの結婚と言う人生の一大事に踏み込むのは責任が必要だ。僕なんて人間が"結婚"に関わる仕事をしているのもおかしな話だがアドバイスする側なんてもってのほか。 でも、ただ今は流れに身を任せるしか失業を免れる方法はないと思った。  「おい赤平どうだった?なんて言われた?」 ディスクに戻ると芝野が心配そうな顔で小声で話しかけてくる。  『あー…とりあえずはまだここにいられそう』  「そっか!よかった〜!突然の呼び出しみたいだったから、てっきりすぐディスクの荷物まとめ始めるかと思ったよ〜」  『、、でもデスクは変わるから来週には片付けないと』  「はっ?どういうこと?」  『カウンセラーのほうに異動だって』  それから一週間が経ち、僕はカウンセラー部署に異動した。芝野は寂しがっていたけど同じフロアで少し遠くを見渡せば、お互い顔合わせられる位の距離だ。寂しいどころかほとんど環境は変わずといったところ。  ただカウンセラー部門は営業とは大きな違いがある。男性ばかりの営業とは違い女性ばかりの部署だ。唯一いた男性社員の岡崎さんが辞めることになり男性カウンセラーは僕一人いる現状だ。  先輩に仕事を1から教わる。とりあえず慣れるまでは三人の会員の担当をすることになった。全員男性ばかりで会員の中には、男性カウンセラーを要望してくる人もいるそうでまさにこの3人がそうだった。 今日はこの後部署に移って初めて受け持つ会員と一人と顔合わせ。事前にプロフィールやこれまでのお見合い履歴をある程度は頭に入れてから初日の挨拶をする予定だ。  『えっとー…小早川(こばやかわ)(しゅう)、、35歳。うわっ、、イケメンだなぁ』  経歴うんぬんの前にプロフィール写真を見て驚いた。正直、結婚相談所に登録している会員は自力での出会いが難しい、自分から女性に声をかけられない、自分に自信がないとかきっとそんな理由と思っていた。  だけどそんなイメージを払拭するようなプロフィールが目の前にある。  『一級建築士で年収1000万、、嘘まじ?まだ35歳だし身長180cmって。選ばれ放題じゃん!なんでこんなところに、、』  「赤平くん!もうすぐ小早川さんくるから準備しててね」  『あっはい!わかりました』  まさかいきなり担当する会員がこんなハイスペックな人だなんて自分に務まるのか自信がなくなってきた。最初は50代くらいの恋愛下手(べた)そうなおじさんぐらいから様子を見たかったのに。  そうこうしているうちに約束の来店時間が来て来店コールが鳴り出迎えに先輩と向かった。時刻はちょうど仕事が終わる位の午後7時、時間ぴったりの来店はデキる男の象徴か。
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