淵(ふち)に届いた声

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 その日の夜‥‥ 『美香子、今度の連休は、こっちに帰ってくるわよね。もう結婚のことは言わないから。顔だけでいいからね』  美香子が仕事から帰ったら、留守電に入っていた。  間違いなく母の声だった。 「顔だけ‥‥という訳にはいかないでしょうに」  そして美香子は思う。  私のような三十代の独身OLが、実家に帰省する時の気持ち‥‥母には分からないだろうな‥‥と。  母は十代で結婚したと言っていたからだ。  留守電のメッセージを消去して、コンビニ弁当の横に、温かいお茶を置く。   けさ沸かしてポットに入れておいたものだ。  とは言っても彼女は、土日はちゃんと料理を作っていた。  明朝も早いので、さっさと食べて就寝することにした。
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