消えた彼

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急に、蒼君の両手が私の首に伸びて来て、強く私の首を締める。 苦しい…痛い…。 息が出来なくて、頭に血が上るような感覚がする。 プルルル―、と、この空間を切り裂くような音が聞こえた。 蒼君は、私の首から手を離すと。 後部座席に置いている、自分のスーツのジャケットを掴み、 そのポケットからスマホを取り出していた。 「―――はい。 ああ。悪い。今、車だから、帰ってからこっちから掛け直す」 そう言って、蒼君は一方的に電話を切った。 「彼女?」 内容迄はハッキリと聞こえないけど、 女性の声が聞こえたから。 「―――婚約者。 うちの会社と取引のある会社の、ご令嬢」 今の蒼君は、何故か上杉朱の名を語っていて。 上杉製菓の御曹司で、そうやって婚約者まで居る。 「もう二度と、俺に近付くな。 次は、本当に殺す」 そう言って向けられた蒼君の目は。 私を本当に、殺そうと思っているのが分かる。 「さっさと降りろ」 そう言って、開いているドアから、無理矢理外へ押して出される。 私が車から出ると、ドアはすぐに閉められて。 私を置き去るように、車は発進した。
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