入れ替わり

2/20

624人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
少し迷ったけど、アフターの約束のお客さんに電話をして、 急に体調が悪くなったと、断りの電話を入れた。 その電話で、その人はとても不機嫌で。 多分、もうこの人はこの店に来ないだろうな、と思った。 もし、またこの店に来ても、私を二度と指名しない。 店のあるビルを出ると、すぐの所に黒塗りのベンツが停まっていた。 そのベンツの中に永倉さんが居て、 私を見て、乗れと言うように、顎をしゃくる。 「お疲れ様です…」 車に乗り込み、伺うようにこの人を見る。 「お前でいいから、ヤらせろ」 凄く、直球だな、と思う。 この人の誘いが、そのつもりなのだとは分かって来たけど。 それにしても、アヤノさんに断られて、スッゴク不機嫌なのが、この人から伝わって来る。 「腹減ってるか? 何か食いに行ってからでも構わねぇけど」 そう訊かれ、少しは私を気遣ってくれているのか、と意外に思う。 「お腹は空いてないです。 直接、ホテルでいいですよ? なんなら、このまま車の中で始めてもいいですよ」 そう笑い、永倉さんを見ると。 少し、面食らったようで。 「じゃあ、適当なホテルに行くか」 そう、少し口角を上げて笑っている。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

624人が本棚に入れています
本棚に追加