消えた彼

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「じゃあ、未希(みき)が高校を卒業する頃には、 俺も向こうでちゃんと家借りれるくらい稼いで貯金もしておくから。 だから、俺が迎えに来る迄待ってて」 「え、本当に?」 「約束」 そう言って、蒼君は小指を立てた右手を私に向ける。 私もその指に、自分の小指を絡めた。 「約束」 実際、その約束は守られる事はなかったけど。 暫くして、向こうで暮らし始めると、蒼君は私に手紙をくれた。 その内容は、新しい仕事の事や都会の感想等、他愛ないもので。 だけど、私は返事の手紙は出さなかった。 その理由は、高校生になった私はスマホを持つ事を施設長から許され、 手紙じゃなくてそのスマホで蒼君のスマホに連絡をしたから。 それから、主に私と蒼君との連絡手段はLINEで。 寮の壁が薄いからと、蒼君が言うので、電話で話す事は滅多になかった。 私も合い部屋なのもあるけど。 そして、お盆休みに、蒼君は新幹線に乗って、私に会いに来てくれた。 この時期に泊まりで来るとお金が凄く掛かるからと、日帰りだったけど。 その日、朝から晩迄私と蒼君はデートして。 そして、初めて、二人でラブホテルへと行った。 蒼君とは、以前から体の関係があった。 それは、私が施設に来て半年を過ぎた頃から。 だけど、私と蒼君が付き合っているのか?と言われると、よく分からない。 「未希、好きだよ」 私を抱きながら、蒼君はそう何度も言ってくれるし、 「私も蒼君が、好き」 私も、そう口にするけど。 私と蒼君は、付き合ってはなかったのかもしれない。 だから、彼は突然私の前から居なくなった。
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