入れ替わり

8/20

624人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
◇ 「ふうちゃんが今からどうしても会いたいって言うから、 俺、もう寝る所だったのに、こうやって出て来たのに。 なに、この子?」 それは、深夜のファミレス。 あの後すぐに、永倉さんは一枝さんにアポを取り、こうして呼び出してくれた。 「いいじゃねぇか? お前の家、すぐそこのマンションだろ」 そうなんだ。 すぐそこにある、あの高そうなマンションかな? 「で、何? 俺に用があるのは、ふうちゃんじゃなくて、紫織ちゃんなんでしょ?」 私の名前、覚えてくれているんだ。 「ああ。 だから、俺はもう帰る」 そう言って、永倉さんはファミレスから出て行った。 飲みかけのコーヒーを残して。 「俺も、なんか飲もうかな?」 一枝さんは、テーブルの上のタブレットを触っている。 「あの、オーナー」 「一枝でいいよ」 「じゃあ、一枝さん。 あなたと蒼君…いえ、上杉朱さんとの出会いを教えて下さい」 「なんか、尋問されてるみたい」 そう苦笑している。 「答えられないなら、無理には聞かないです…」 やはり、この人は何も蒼君の事を教えてくれないかもしれない。 「朱君とは、仕事の取引で知り合った。 俺、本業って言い方変だけど、居酒屋の経営してて」 「居酒屋…」 それで、この人はこんな遅く迄起きてたのだろうか? つい数時間前迄、居酒屋で働いてて。 でも、この人がそんな体力仕事をしているようにも見えないけど。 「上杉製菓さんには、アイスに添えるウエハスや、うちで出してるお菓子の盛り合わせで数点下ろして貰っていて。 それで、上杉製菓専務の朱君とは接待がてら食事行って」 へぇ、居酒屋相手の接待に、専務が出て来るのか。 その居酒屋、わりと大きなお店なのかな?
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

624人が本棚に入れています
本棚に追加