入れ替わり

10/20

624人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
一枝さんの住む場所は、先程居たファミレスと目と鼻の先。 私が此処かな?と思った高級マンションなのだけど、 それは一階で。 「一階だと、専用の庭があるんだ」 庭? 庭なんか何にするのだろう?ガーデニング? 「ラビットラン、作ってるんだ」 ラビットラン? リビングの掃き出し窓のカーテンを開けて、それを見せてくれる。 暗闇の中、木の柵で造られたサークルのようなものが見える。 「後、にんじんと大葉育てていて」 それもうっすらと見える。 「施設に居たうさぎも、にんじん好きでよく囓ってました」 私の手からもあれば、地面に転がるそれに囓り付いていた子もいた。 「うちの子達は、にんじん自体は食べないんだけどね。 にんじんの葉が好きで」 にんじんじゃなく、その葉っぱ? それは逆に贅沢なのか、そうじゃないのか分からない。 それよりも、うちの子達って事は、沢山居るの? 「あ、うさぎ達を見せてあげないとね」 それ程、本当にうさぎが見たいわけではなかったけど、 ちょっと、ワクワクとした。 一枝さんがリビングに面した木の扉を開くと、そこには広い部屋があり。 平面に、うさぎの居る大きなケージが四つ並べてある。 「うわ、可愛い」 そのケージ一つに一匹ずつうさぎが入っている。 「この子が、二美(ふみ)でホーランドロップで、こっちが三代(みよ)でミニレッキス。 で、この子が四穂(しほ)でドワーフホト。 後、末っ子は五子(いつこ)でライオンラビット」 「そうなんですね…」 うさぎの紹介をそうやってされるけど、殆ど覚えられない。 「前はネザーの子も居てね。 長女で、一子(いちこ)。 病気で亡くなっちゃってね。 だから、本当は五人姉妹なんだよ。 と、言っても、五人って人じゃないし、彼女達は、全員本当に姉妹じゃないのだけど」 「そうですよね…」 私はうさぎに詳しくないけど、 みんなそれぞれ、毛の色もそうだけど、風貌も違い。 とても、みんな血が繋がっているようには見えない。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

624人が本棚に入れています
本棚に追加