愛人

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◇ バスルームからは、蒼君の方が先に出て行った。 私は一人になり体を、洗った。 バスルームから出て、使っていいと、蒼君が置いて行った大きなバスタオルで、髪の毛をガシガシと拭いた。 大好きな蒼君とのセックスなのに、 なんで、こんなにも悲しいのだろう? 全く好きでもない男達に抱かれた後と変わらないくらいに、今虚しい。 服を着てリビングへと行くと、蒼君はソファーに座り、誰かと電話中。 それがすぐに、例の婚約者なのだと分かる。 「え、ああ。 俺だって、夏迄、恵梨香(えりか)に会えないの、辛いよ」 えりかさんって、いうんだ。 「浮気なんてしないって。 仕事ばっかだし、最近は、暇有ったらゲームばっかで。 そうそう。前話してたオンラインの」 今の蒼君は、そうやってゲームとかするんだ。 今まで、既婚者に限らず相手の居る男性と関係を持った事は、何度もある。 こうやって、私の前でその女性に電話やLINEをしたりも、何度も有った。 そんな時、いつも、その女性に対して、そうやって浮気されて裏切られて可哀想だな、とか、罪悪感を持ったりしたけど。 今は、違う。 電話の向こうの蒼君の婚約者が、羨ましくて仕方ない。 こうやって浮気されていても、浮気相手にされている私なんかよりも、何倍もいい。 蒼君はリビングに私が戻って来ているのに気付き、 適当に相槌を打って、その電話を切った。 「蒼君、私そろそろ帰るね?」 なんだか、これ以上蒼君と居たくない。 というよりも、する事が終わった今、居心地が悪い。 用が済み、帰れ、と言われる前に、自分から帰ろうと思う。 「分かった。 また連絡するから、LINE教えて」 そう言われ、リビングの床に置いていた私の鞄からスマホを取り出して、 蒼君とLINEの交換をした。
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