消えた彼

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「えー! じゃあ、そっくりさんなんじゃない? ドッペルゲンガーとか?」 一枝さんはそう言うけど。 「他人のそら似じゃない! 私が蒼君を、見間違うわけない!」 「うっせぇ」 その永倉さんの言葉に、言葉が引っ込んだように口を閉ざしてしまう。 「どうでもいい。 うっせぇから、お前ら今日はもう帰れ」 永倉さんは、私と一枝さんを見ている。 「まあ、もう俺は帰るんだけどね。 朱君も、さっきのあれで他の客から注目されて居づらいから、 もう他の店に移動してて、俺も今からそこに行くつもり」 え、蒼君はもうこの店に居ないの? 「あの、オーナー。 私もそのお店に連れてって下さい!」 「この話の流れで、連れて行くわけないでしょ?」 そう、笑顔で返される。 そして、もうこれ以上、この人に蒼君の事を訊いても無駄なのだと思わされた。 「―――永倉さん。佐伯店長。 私はもう大丈夫なので、元木社長の所に戻って、フォローして来ます」 「そう。分かった。 俺も一緒に元木社長に謝るから」 佐伯店長にそう促され、私と佐伯店長はスタッフルームを出た。
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