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…
カフェでテイクアウト用のミルクティーを飲みながら、二人並んで駅前をブラブラと歩く。
駅の周りは学園が近くにあるからか、若者向けのお店が多く立ち並んでいる。カフェにアパレル、コスメ用品店やファミレス。大衆的なお店、個人経営の小さなお店などなど。
通り抜ける暖かな春風が心地いい。
「あ!彩芽!あの服可愛い!」
「ふふっ、そうだね」
「そうだ!買いたいコスメあったから見に行ってもいい?」
「うん、もちろん」
うん、こんなまったりしたウインドショッピングも悪くない。華の女子高生を謳歌してる感じ!
「…蘭織はすごいよね」
「え?」
ミルクティー片手にショーウィンドウを覗いていた私に、彩芽は憂いた表情で言葉を紡いだ。
「まだ新学期が始まって間もないのに、もうクラスの人たちと馴染んでる」
「去年から同じクラスの子とかいるじゃん?」
「まぁ、そうかもだけど」
手元のミルクティー見つめる彩芽。少し水滴のついたプラスチックコップが、彼女のしなやかな指先を濡らしている。
「昔から誰とでもすぐ仲良くなれるし、見た目だって高校生になってからオシャレになったし…」
「いや、そうかな?…見た目は高校デビューってやつだよ!うち髪色自由だし、いろいろやっておこうと思ってさ!」
「…好奇心?」
「んー、難しく言えば?」
オシャレと言われた私は前髪を持ち上げてみる。綺麗に染ったアッシュブラウンが、春の日差しを浴びて光った。
たしかに、私は意識して今っぽくしている。短く折ったスカートに癖毛を活かしたこだわりのゆるふわ髪。バレない程度のメイクと着崩した制服。
それは彩芽の言った通り、今を華々しく過ごしたいという純粋な好奇心もある。けどそれとは別に、なにかに熱中したい!という心の表れでもあって…
「……」
それもあって私はVOISYSをインストールした。手に入れたのは高一の中頃、お金を必死に貯めていた頃が懐かしい。
『──!!』
感傷に浸っているというのに、さっきからちょこちょこバイブレーションの振動を感じる。
…まぁこんな風に迷惑をかけられるとは思ってなかったけど。
私は諦めの目線を向けながら、スマホの入ったバッグを軽く叩いた。
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