5話

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その日の夜遅く、健人から『ドラマ見た?』というメッセージがきた。 既読をつけないようにして確認して、そのまま寝てしまった。 翌朝になってから『見たよ。見てるこっちが恥ずかしかったw』と返しておいた。 『私とキミの方程式』はJCJKを中心に大ヒットとなった。 JCJK雑誌には健人と渡辺舞花のインタビューがよく載っているらしい。2人は理想のカップルと言われてるんだとか。 原作漫画が連載しているキラキラした少女漫画誌の表紙に健人がいたときは、思わず二度見してしまった。 番宣でバラエティー番組に出ているのもよく見かけるようになった。渡辺舞花と一緒にクイズやゲームをしてる健人はとびきり優しい笑顔で、確かに理想のカップルに見える。 健人とはますます会えなくなった。 学校にはほとんど来てないらしい。芸能コースはそれでも大丈夫らしいが。 メッセージも返ってこなくなった。既読は付いてるから、見てはいるんだろうけど。 芸能コースと普通コース、同じ学校に通っているというだけで、生きている世界はまったく違う。 健人との日々が夢だったかのように、俺の高校生活は平凡に過ぎていった。 「彰紘!」 「健人!?」 ある日の放課後、下駄箱に出ると健人が駆け寄ってきた。 「学校、来てたのか」 「今さっきな。もう帰るけど」 「なんのために来たんだよ」 「ちょっとでも顔出したかったから。彰紘に会いたくて……なーんてな!」 健人の冗談……とわかっていても、嬉しいと思ってしまう俺はチョロい。 「ところで、来週からテストだろ? 頼む! ノート貸してくれ!」 健人が「一生のお願い!」と手を合わせてくる。 2度目じゃねえかよ。 「それが目当てか」 「最近授業出れてないんだよ。テスト範囲は普通コースも芸能コースも一緒だからさ」 「いいけど、芸能コースは赤点取っても留年とかないんだろ?」 「余程じゃなければないらしいけど、でも俺今『数学の天才』やってんだぜ。赤点取ってたらイメージ崩れるだろ」 「そういや健人、数学得意なのか?」 「ぜんっぜん! 1番苦手!」 ドラマの中では難しい公式をスラスラ披露してたが、丸暗記なのか。それができるならテストも余裕だろ。 「でも今日数学のノート持ってない」 「えー! マジか……」 顎に手を当てて、健人が考え込む。 ドラマで愛斗がよくやる仕草だ。癖になってんのか? 「じゃあさ、今から彰紘の家行っていい?」 「今から? 時間大丈夫なのか?」 「あと2時間くらいはへーき」 「そんな忙しいのに、よく学校来たな」 「彰紘に会いたくて!」 「ノートを借りたくて、だろ」
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