-大橋と海の見える街で出会うバーチャルシンガ-

3/96
前へ
/96ページ
次へ
あれこれ考えると頭が痛くなってきたので、私はひとまず席を離れる、と同時に一つ大きなため息を零す。 作業画面を閉じたと言うのに、ディスプレイ前の椅子に腰掛けるとどうも配信モードになっている自分が… このままではいけないと思い、キッチンへと足を運び、冷蔵庫の扉を開く 中には職場から頂いた廃棄食品の数々と、自分の好きな飲料(ドリンク)が並んでいる。 普段であればスーパーで買いだめした材料を使って作り置きなどをしているのだけれど タイミングの悪い事に全て使いつくしており、こんな夜遅い時間にスーパーで何か買いに行く気にもなれず。 ミックスサンドイッチと缶チューハイを取りだし。 パソコンディスクとは別の小さな食卓の上に広げ、座椅子に腰掛ける 部屋の中を見渡すと、ずいぶんと散らかっており、同年代の友達とかが見たら多分ドン引きすると思う 「……明日はお仕事休みだし、ちょっと掃除しよう…」 諦めモードに入った私は、缶のステイオンタブを引き起こした それはまるで、現実逃避へのスイッチの様に見えなくもない。 静かな部屋の中で、水素…ではなく窒素の抜ける音が響き渡る 飲み口に唇を重ねて、勢いよく液体を体内へと取り込む為に喉を鳴らす 四度ほど鳴らした後、一旦缶との口づけに合間を挟む お酒におぼれる人間の情けない溜息が響いた
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加