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画面から小夜が笑顔のままで部屋の中を見渡しているような感覚に陥ったので私は面倒くさいながらも立ち上がって、左手でマウスの操作をする
「お前はあんまり見るんじゃないぞ、こういうの」
はたから見たら、頭のぶっとんだ人に思われそうだろうけど、アプリで作った分身とは言え
活動を開始してから一年近くが経過し、愛着がないと言えばそれは嘘になる。
私が憑依していない小夜はあいもかわらず笑顔を振りまいている
こんな娘が現れたら、そりゃ私だって惚れちゃいますよ
小夜は電子の海では歌も上手でトーク力抜群のアイドル故に、こういった人としての汚らわしいのを見せてはならないと思った。
子供を授かる親の気持ちとはこういうものなのだろうか…?
「ゆっくり、おやすみ、小夜」
そういって、彼女にはパソコンのディスプレイからご退場していただいた。
アルコールが入った私は、ほろ酔い気分でサンドイッチを頬張りつつ、無意味な時間を過ごしていると
普段は鳴る事の無いスマートフォンが着信を知らせる為に真っ暗な画面に光を注ぐ
「……嫌な予感しかしないんだけど」
せっかく、晩酌が進んでいる最中に文字通り水を差されて、思わず舌打ちをしてしまった。
表示された、文字を見ると(やっぱりか…)と言う気持ちが沸き上がる
残念ながら、私の携帯の電話・メール着信のほとんどは職場・お店のクーポン関連、あとごくまれに間違い電話が少々と言った所。
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