-大橋と海の見える街で出会うバーチャルシンガ-

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焦らす理由もないし、私としてはこのままの勢いで話の幕を下ろしたかったので続ける事にした。 弁護士さんと話の折り合いがつき、垂水(ここ)に引っ越してからは何もできない日々が続き 荷物の移動とか部屋の片づけを無理くり終わらせた後、まるで電池の切れかかったロボットの様に地べたを這うようにしか生活が出来ず 一日のルーティンと言うものがあってないようなものに等しく、これまでに取る事の出来なかった休息を取り返すかのように惰眠を貪りまくった。 [どれくらいの時間眠っていたんですか?] 「詳しくは覚えてないけど、大体十~十二時間くらいは寝てたんじゃねーかな」 [それだけ眠ると、生活リズム崩れそう……] 「実際崩れてたよ、で、お腹がすいたら起きだす、って言う生活を繰り返していた」 空腹のあまりに目を覚ますと、スーパーのセール品で購入した、インスタントラーメンを調理し、箸を使って一気に胃へ流し込み、消化が落ち着き始めて眠気が襲い掛かってきたら(また寝る)の繰り返しだった。 今考えるととてもじゃないけど、女らしさと言うのは皆無で、周りの人はもちろんのこと瑠菜には絶対見られたくないものナンバーワン間違いなしだ。 メイクやおしゃれ、そんなことは何処かに吹き飛んでいた。 学生時代に友達とファーストフード店に足を運んだり、服や化粧であれこれ悩むのが遠い遠い過去の事の様に思えた。 [どんな格好で過ごしていたんですか?] 「えー?季節が秋だったからってのもあるけど、もう、口にするのもおぞましい恰好だったよ」 [ま、まさか、全裸とか] 「そのラインは超えてないけど、だいぶ寄っていたような気がしなくもない、何せその地獄の様なルーティンを抜け出したのは約二~三週間後だったからな」
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